床ずれ交番

間違いだらけの褥瘡治療




トータルケア

  褥瘡分類の使い方が混乱している!

  局所のみの治療は本当の治療ではない!(除圧、全身状態の改善が重要)

  定期的なリスクファクターのアセスメントを忘れては、十分な看護と治療は行えない!


除圧

  円座の使用は要注意!

  ラバーシーツは用いない!

  パンパンに空気を入れたエアーマットは褥瘡をつくる!

  褥瘡ができたらエア噴出型のエアマットは避けたい!

  どんなエアマットでもよいという考えは誤っている!

  一律の体位変換はよくない!

  ベッドの30度以上のギャッジアップは要注意!


ケア

  創部や発赤部のマッサージは絶対禁忌!

  感染を恐れ入浴させないのはかえって逆効果!

  スキンケア不足に要注意!

  水分を控えると失禁をひどくする

  創部の清拭は絶対にしてはいけない!


局所管理(洗浄・消毒・乾燥)

  創部の洗浄不足は治癒を遅らせる!

  創部をこする洗浄は絶対にやめる!

  化膿していない創の消毒は必要ない!

  消毒に対する誤った考えは捨てよう!

  洗浄液に消毒剤を混ぜても意味がない!

  MRSAに対する過剰対策を行わない!

  創部の乾燥はよくない!


薬剤

  局所の抗生物質散布は慎もう!

  デブリードメント不足は組織の再生を遅らせる!

  同一治療薬での治療は要注意!

  ハイドロコロイドドレッシングを創の大きさに切って使うのは絶対にやめる!




トータルケア 褥瘡分類の使い方が混乱している!
先頭に戻る  褥瘡の分類には多くのものがありますが、Campbellの分類、Sheaの分類(表1)、IAETの分類(表2)がよく用いられています。褥瘡のグレードをいうときには、どの分類を用いているのかをはっきりと明示しておいた方がよいでしょう。

表1  Sheaの褥瘡の分類
 I 度 急性炎症を伴うが、表皮のみの浅い褥瘡
 II 度 真皮、皮下組織に達している褥瘡
 III 度 筋肉にまで達している典型的褥瘡
 IV 度 骨組織にまで達していて、骨および関節が破壊されている褥瘡
表2 IAETの分類(IAET:International Association for Enterostomal Therapy)
ステージ I
(グレード I)
ステージ II
(グレード II)
ステージ III
(グレード III)
ステージ IV
(グレード IV)
圧迫除去後30分以内に消退しない発赤(紅斑)。表皮は損なわれていない。いわゆる可逆的な段階。 表皮あるいは真皮に至るが、皮下組織に至らない皮膚の部分欠損。発赤(紅斑)を伴う水疱や硬結も含む。創傷底は湿潤で、ピンク色。痛みを伴う。壊死物はない。 真皮全層を超え、皮下組織に至る全層欠損。痂皮で被われていない限り、浅い潰瘍がある。壊死組織、ポケット形成、皮下交通、滲出液、感染の可能性がある。創傷底は通常痛みを伴わない。 皮下組織を超え、筋膜、筋層、関節、骨に達する深い組織欠損。壊死組織、ポケット形成、皮下交通、滲出液、感染の可能性がある。創傷底は通常痛みを伴わない。
トータルケア 局所のみの治療は本当の治療ではない!(除圧、全身状態の改善が重要)
先頭に戻る  褥瘡の治療の中で最も優先されるべきものは、創部の治療ではなく除圧です。また栄養状態が悪い場合には、創部の回復は非常に遅れます。場合によっては悪化につながります。基礎疾患の改善も重要です。「除圧や全身状態の改善なくして、褥瘡の治癒はあり得ない」と言っても決して言い過ぎではないはずです。
トータルケア 定期的なリスクファクターのアセスメントを忘れては、十分な看護と治療は行えない!
先頭に戻る  褥瘡スケール(ノートン、ゴスネル、ブレーデンのスケール)は予防のためだけにあるのではありません。褥瘡治療を行っている患者さんにも定期的に褥瘡スケールを用いて、現在治療を行っていくに十分な条件にあるかどうかの判定を行いましょう。少しの訓練を行えばブレーデン・スケールが、最も簡単にその時点でのリスクファクターを示してくれるでしょう。アセスメントなくして、適切な看護も治療もあり得ません。
除圧 円座の使用は要注意!
先頭に戻る  除圧目的によく使われるドーナツ型のクッション(円座)は、血管の圧迫による創部のうっ血や虚血、円座による深部組織のずれと圧迫、体位が制限されるなどのほか、創部に疼痛はなく、周囲皮膚に疼痛があるため、患者は、円座の圧迫の大きい部分を創部に当てようとするなどの弊害を生じることがあり、かえって逆効果となることがよくあります。

 円座以外の除圧方法や患部の保護方法をもう一度再検討し、安易な使用は避けたほうがよいでしょう。
除圧 ラバーシーツは用いない!
先頭に戻る  ラバーシーツは、通気性が悪く皮膚が湿りやすいうえ、ベッドやエアマットの体圧分散効果を半減させ、血行が阻害されることがあります。特に仙骨部への影響が大きいです。ラバーシーツは用いない方がよいでしょう。
除圧 パンパンに空気を入れたエアーマットは褥瘡をつくる!
先頭に戻る  エアーマットは、エアーの入れ過ぎでパンパンになると、かえって褥瘡を作ったり、悪化させたりする危険性さえあります。エアーマットは体にかかる圧を分散させるため、エアーをいっぱいにしないで、体が底付きしない程度まで圧を落とすのが正しい用い方です。

 体位変換時、寝衣やオムツ交換等の処置時に、介護に支障があるならば、その時だけエアーを十分に入れると良いでしょう。ただし処置後にエアーマットの内圧を元の低圧に戻すのを忘れることがしばしばあるようですので、ご注意下さい。
除圧 褥瘡ができたらエア噴出型のエアマットは避けたい!
先頭に戻る  エアーを噴出するタイプのエアマットがあります。寝衣や皮膚を湿潤にしないというメリットがありますが、エアーを噴出させるためには低圧保持ができず、また創部が乾燥する可能性がある上に、MRSAなどの細菌を室内に飛散させる可能性もあります。
除圧 どんなエアマットでもよいという考えは誤っている!
先頭に戻る  細長いエアセルの並んだセル型のエアマットと亀の甲の形をした一体形成型では、セル型のほうが褥瘡発生率が1/2に抑えられます。エアセルの数によっても効果は大きく異なります。エアセルは20本以上あるものを選んで下さい。また、マットの材質により、耐久性は大きく異なります。少なくとも耐久性の弱い塩化ビニル製のエアマットは避けたいものです。エアポンプも低圧保持のできるようにコンピュータが入っているものは、管理が容易になります。

 少なくとも褥瘡発生のリスクの高い患者さんや、すでに褥瘡のできている患者さんには一体形成型ではなくエアセル型のエアマットを使うべきです。(表3)

表3 エアマットの選び方
1 エアセル独立型
(筒上分離型)
エアセルの取り外しができるタイプは、一体成形型の1/2の褥瘡発生率
2 エアセル数は20本以上 幅の狭いエアセルが多いほどよい
エアセル数が多いと船酔い症状はない
3 エアセルに厚み(高さ)がある 臥位時に体が底付きしない厚みが必要
4 交互収縮または順次膨縮タイプ 受圧分散が図れる
2連より3連の方が受圧面積が広くなり、より効果的
5 耐久性のある材質 ◎ウレタンフィルム、○高重合ポリマーフィルム、×塩化ビニル
6 低圧保持ができる オーバーレイタイプはエアポンプに圧センサーがあるもの
7 エアポンプは静かで、耐久性のあるもの
8 エア噴出型はよくない 低圧保持ができないのが最大の欠点、また褥瘡部が乾燥しやすい
MRSA発生病室ではMRSAが飛散するため使用禁忌
除圧 一律の体位変換はよくない!
先頭に戻る  患者さん全員に一律な体位変化スケジュールを行うことには無理があります。麻痺や拘縮のため、ある方向への体位をとることは困難であるかもしれませんし、褥瘡がすでにできている場合には、創部を下にする体位はできるだけ避けたいものです。

 また体位変換は3方向(仰臥位、両側臥位)が多いですが、30度の半側臥位や座位を組み合わせ、特定部位の圧迫の影響をできるだけ避けるようにしましょう。臀部には骨がないため、30度の半側臥位は骨突起部への圧迫が少なくなります。
除圧 ベッドの30度以上のギャッジアップは要注意!
先頭に戻る  ベッドを30度以上ギャッジアップすると体は足の方向にずり落ちていきます。このときに摩擦やずれを生じ褥瘡発生の原因となります。膝をまず曲げてからギャッジアップし、角度は30度までとするとよいでしょう。また長時間のギャッジアップは、殿部に大きな体圧がかかるので避けたいものです。

 ただし脳血管障害の急性期には、膝を曲げてギャッジアップされた姿勢は、健側の上下肢の動きまで制限しますので適しません。
ケア 創部や発赤部のマッサージは絶対禁忌!
先頭に戻る  圧迫による発赤のある皮膚に、血行を改善するためにマッサージをすることがありますが、マッサージは禁忌です。皮膚の下の骨突起部に近い部分は皮膚よりも広い範囲で大きな力が加わっている上に損傷しやすい部分でもあります。皮膚には単に発赤が認められるだけでも、骨に近い軟部組織は大きな損傷を受けているので、マッサージによって、軟部組織の損傷と炎症を進行させてしまいます。
ケア 感染を恐れ入浴させないのはかえって逆効果!
先頭に戻る  褥瘡ができているからという理由で、入浴を中止するのはかえって逆効果です。褥瘡患者こそ皮膚の清潔が必要であり、入浴によって血行促進も期待できます。壊死物や滲出液があるときは、創が汚染されないようにポリウレタンフィルムドレッシングか閉鎖性ドレッシングで密閉して入浴するとよいでしょう。特に浴槽を共同で使用するときは、感染予防にもなります。

 肉芽形成しているときはドレッシングは必要とせず、湯上がり時にシャワーで創の洗浄を十分に行います。入浴後の創の消毒は必要ありません。
ケア スキンケア不足に要注意!
先頭に戻る  皮膚は常に清潔を保ち、湿潤を避けるように心がけましょう。全身状態が許せば、入浴の回数はできるだけ多くとりたいものです。入浴ができないときには、全身清拭、部分清拭、足浴を行います。清拭は重症の患者さんにも行えますし、清拭時に全身の観察もできます。

 失禁対策にオムツを使用すると皮膚の湿潤は避けられません。湿潤している皮膚は、オムツ交換時の摩擦やずれにより褥瘡の発生や悪化の原因となります。さらに下痢をしていると水様便のより皮膚障害をおこしやすく、仙骨部や坐骨結節部の褥瘡の原因となります。できれば採尿器や失禁用パッドの使用を考慮しましょう。

 オムツ使用時は、皮膚の湿潤を避けるため、石鹸を用いず、皮膚清拭剤を用いると皮膚の清拭回数を減らすこともできます。排便時には、市販の消炎剤と皮膚保護剤が含まれているスプレータイプのものを用いると便利です。やむなくオムツを使用するときは、できるだけ頻回に新しいものと交換することは言うまでもないことです。
 またバルーンカテーテルを用いても、便失禁のためオムツが必要となるだけでなく、複雑性尿路感染症や排尿障害の原因となります。
ケア 水分を控えると失禁をひどくする
先頭に戻る  寝たきりの人は失禁を恐れ、水分摂取を控えていることがある。水分不足から濃縮尿となり、膀胱粘膜を刺激し、かえって失禁や頻尿をまねく結果になる。
ケア 創部の清拭は絶対にしてはいけない!
先頭に戻る  創部は洗浄するものであって、清拭するものではありません。清拭によって創に細菌をこすりつけることになってしまいますし、創部の細菌や膿を周囲皮膚に拡げる結果にもなってしまいます。さらによくないことに、摩擦を加えることにより脆弱となっている組織を傷害し、肉芽組織や再生上皮に損傷を加えてしまいます。
局所管理 創部の洗浄不足は治癒を遅らせる!
先頭に戻る  創の処置は、消毒ではなく洗浄が基本です。できるだけ多い量の洗浄水で圧をかけて洗浄しましょう。洗浄により、創部に残った薬剤、膿、過剰の滲出液、さらには細菌も洗い流すことができます。ポケット形成した褥瘡では、ポケットの中も十分に洗浄しなければいけません。洗浄水の量を増やしただけで、治癒までの時間が短縮され、結果的に褥瘡患者さんの数が減った施設もあります。
局所管理 創部をこする洗浄は絶対にやめる!
先頭に戻る  洗浄の際には、絶対にガーゼや綿球で創をこすってはいけません。特に良性の赤い肉芽が形成されてきたら注意が必要です。新しくできた肉芽は脆く、擦過によって容易に壊れ、出血してしまいます。また再生上皮も非常に脆いため、擦過によって容易に剥離されてしまいます。
局所管理 化膿していない創の消毒は必要ない!
先頭に戻る  化膿していない創は、洗浄が十分であれば消毒の必要はありません。皮膚に細菌が存在するように、ほとんどすべての褥瘡には細菌が存在します。創面を完全な無菌状態にする必要はありません。創面に細菌が存在していても褥瘡は治癒します。特に肉芽形成期以後は、創面に菌が付着しているに過ぎません。また消毒薬を多量に用いて、綿球でいくらこすっても、創の深部や組織内には細菌が残っています。さらに消毒で除菌ができたとしても、短時間で菌数は元に戻ってしまいます。
局所管理 消毒に対する誤った考えは捨てよう!
先頭に戻る  消毒薬は、細胞障害があるといわれています。肉芽が形成されてくれば消毒薬は使わなくても構いません。しかし炎症期では化膿していたり、MRSA感染をおこしていることもあります。このような場合には抗菌剤や抗生剤の外用薬が第一選択ですが、消毒薬も用いるべきです。

 ポビドンヨードの細胞障害は確かに報告されています。それは高濃度のものを多量に用いた試験管内の実験によるもので、適切な濃度と量で人体に用いたとしても大きな影響はないと考えられます。また滲出液や血清成分が存在したり、壊死物により複雑な創面を形成している人体では、試験管内の実験より効果も低下し作用発現時間も長くなると考えられます。1〜2分後に洗い流したとしてもなんら問題はありません。
局所管理 洗浄液に消毒剤を混ぜても意味がない!
先頭に戻る  消毒剤は適切な濃度で使用しなければ効果を発揮しません。洗浄液にポビドンヨード(イソジンなど)を混ぜても、消毒効果のない低濃度の消毒液ができるだけで、無意味なことです。
局所管理 MRSAに対する過剰対策を行わない!
先頭に戻る  ICU、外科病棟、透析病棟、極度の免疫不全の患者さんのいるユニットなどでは、厳重なMRSA対策が必要です。しかし通常の内科病棟、老人ホーム、特別養護老人ホームや家庭では、先に述べたユニットほど厳重なMRSA対策を行う必要はありません。過剰のMRSA対策は患者さんの差別につながったり、人権に関わることもあります。
局所管理 創部の乾燥はよくない!
先頭に戻る  ドライヤーや日光浴などで創部を乾燥させることは、創傷治癒の遅延につながります。乾燥は、創傷治癒過程で重要な白血球、マクロファージや細胞増殖因子の遊走を阻止する上、組織の脱水から壊死をきたしたり、細菌増殖の温床となり創感染の原因となります。創部は創傷治癒を円滑に進行させるために適切な湿潤状態を保たなければなりません。

 ただし一日に数回ガーゼ交換しなければならないくらいの滲出液は、過剰の湿潤状態を作っています。これは炎症が進行しているためにおこるもので対策が必要となります。
薬剤 局所の抗生物質散布は慎もう!
先頭に戻る  注射用抗生剤の局所への散布は、単に保険適用がないだけでなく、深部や組織内への薬剤の浸透力が弱く効果が少ない上、新たな耐性菌をつくる可能性もあり、慎むべきです。
薬剤 デブリードメント不足は組織の再生を遅らせる!
先頭に戻る  炎症の強い時にには、褥瘡は黒色の痂皮や黄色の壊死物で被われています。この時期にデブリードメントを避けて治療はできません。デブリードメントの不足は、組織の再生を遅らせるばかりでなく、細菌の温床となります。壊死組織をできるだけ早く除去することが組織の再生を促進し、感染を防ぐことになります。
薬剤 同一治療薬での治療は要注意!
先頭に戻る  褥瘡は、痂皮や壊死物で被われる炎症の強い時期と、肉芽や上皮が形成される再生の盛んな時期に分けることができます。炎症の強い時期には、壊死物の除去、過剰の滲出液の除去、感染対策に適した薬剤や治療材料を選択し、再生の盛んな時期には、肉芽形成や上皮形成を促進させる薬剤や治療材料を選ぶべきです。炎症の強い時期がすみ、再生の盛んな時期に入れば、全身状態が許せば外科的な閉鎖術(単純縫合、皮弁術、筋皮弁術など)の方が適している場合もあります。

 また効果のない薬剤を漫然と使用することは、いたずらに治癒までの時期を長引かせるだけであり、場合によっては悪化につながることもあります。少なくとも1〜2週間に1回は現在使用している薬剤が適切かどうかアセスメントする必要があります。
薬剤 ハイドロコロイドドレッシングを創の大きさに切って使うのは絶対にやめる!
先頭に戻る 図3 ハイドロコロイドドレッシング(デュオアクティブドレッシング、コムフィールなど)を創の大きさに合わせてハサミで切っているのを見かけることがありますが、・ハイドロコロイドの量が不十分である、・ゲル化したハイドロコロイドが横漏れしやすい、・創縁の脆弱な部分に圧がかかる、などの弊害があるのでよくありません。ハイドロコロイドドレッシングは、創周囲の健常部を2〜3cm被う大きさか、大きな褥瘡なら創の直径の2倍以上のものが必要です(図)。

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